雪結晶は、雲の中を落ちながら過冷却の雲粒を捕捉します。 雲粒は衝突後に凍結し、着氷粒として表面に残ります—— 電子顕微鏡観察では、初期の着氷粒は扁平な半球状に見えることが多く、 進むと細長い形・不規則な形も現れます(Rango ほか 2003)。 着氷が進んで元の結晶形を識別できなくなった粒子が雪あられで、 六角形・塊状・円錐状があり、必ずしも丸い球ではありません。
この«段階»という並びについて。本サイトの「段階」は、構造と機構を理解しやすく並べた教育上の整理です。すべての雪結晶がこの順序ですべての形を通過するわけではありません。
操作方法:モデルはドラッグで自由に回転できます(スマートフォンでは1本指でなぞる)。「真上から」ボタンで顕微鏡写真と同じ視点、「真横から」で厚みや層構造が分かる視点になります。スライダーのあるモデルは、形を決めている量そのものを動かせます。
これまでのページでは、水蒸気から氷が成長する気相成長を中心に扱ってきました。 これに対して雲粒付着は、すでに液体である過冷却雲粒を雪結晶が捕捉し、 それが凍結して質量を増す着氷成長です。 実際の雲では、気相成長と着氷成長が同時または交互に進むことがあります (第5段階の雲粒凍結や第10段階の併合も、純粋な気相成長ではありません)。
雲粒は結晶格子に沿って規則的に並ぶのではなく、空気力学的に衝突しやすい場所へ付着します。 Rango ほか(2003)の低温走査電子顕微鏡観察では、付着した雲粒の直径はおよそ 10〜100 µm でした——ただしこれはその観測試料で得られた範囲で、 すべての雲に共通する固定値ではありません。 0.5 mm の樹枝六花にとって、これは決して小さくない粒です。
付く場所にも偏りがあります。同観察では、単結晶では着氷粒が一方の面に集中する例が 多く報告されています(集合体ではより無作為に分布)。 同論文は、初期の扁平な粒を落下する結晶の前面への衝突で、 後期の伸長した粒を空気力学的に後流側へ運ばれた雲粒の付着で説明しています。 その後に両面・全周へ広がるかどうかは、落下姿勢・気流・雲粒径・衝突効率・ 着氷による空力特性の変化に依存し、一般則としての一方向の経路は確定していません。
雲粒付着の一つの模式例。スライダーで着氷粒の量を増やすと、樹枝状結晶 → 雲粒付(R1)→ 濃密雲粒付(R2)→ 霰状雪(R3)→ 雪あられ(R4)とラベルが変わります(区分の境界値は教育用の便宜値で、分類に定量境界はありません)。着氷粒は結晶の枝の表面に接するよう置き、初期は扁平な半球状、進むと伸長した粒を混ぜています(Rango ほか 2003 の観察形状の模式)。「分布」ボタンで片面偏在/両面/全周を切り替えられます——どの経路をたどるかは条件依存です。粒径・配置は絶対スケールに較正していません。
雲粒が付いた結晶を何と呼ぶかは、大きさではなく 元の雪結晶の形がどの程度残っているかで決まります。
| 分類 | 定義(Kikuchi ほか 2013) |
|---|---|
| R1 雲粒付結晶 | 着氷しているが、元の結晶形が容易に識別できる |
| R2 濃密雲粒付結晶 | 密に着氷しているが、元の結晶形を識別できる |
| R3 霰状雪 | R2 より着氷が進むが R4 ではない。六角形・塊状・非着氷枝が残る型がある |
| R4 雪あられ | 元の雪結晶を識別できない。六角形(R4a)・塊状(R4b)・紡錘状(R4c)に分類され、平均径 1〜3 mm——紡錘霰が最も多く見られる(2012年分類論文) |
形態分類と、粒径による気象用語は別の軸です。 グローバル分類の R1〜R4 は、着氷の程度と元の雪結晶形が識別できるかによる形態分類です。 一方、気象庁の用語では、雲から落下する直径 5 mm 未満の氷の粒を「あられ」、 積乱雲から降る直径 5 mm 以上の氷塊を「ひょう」とします(予報用語集)。 この2つを混同しないことが重要です。
雲粒の衝突位置は完全に一様ではありません。 結晶まわりの気流、雲粒の慣性、結晶の向き、枝や縁の形によって、 捕捉されやすい場所が変わります——支配する輸送過程は、 水蒸気の拡散(気相成長)とは別物です(第8段階の拡散不安定性と同一視はできません)。
着氷が進むと、細い枝や空隙が凍結粒に覆われ、 投影外形は密で丸みのある形へ変わりやすくなります。 ただし雪あられには六角形・塊状・円錐状があり、必ず球形になるわけではありません。
まとめると、気相成長は鋭い枝や面を発達させる場合があり、 着氷は細部を覆って外形を密にする傾向があります——傾向であって普遍則ではありません。 1粒の雪の最終的な姿は、この2つがどちらの側にどれだけ働いたかの記録です。
雲粒付着は、その結晶が過冷却液滴と衝突した直接的な証拠です。 着氷の程度は雲内の液水状態を知る手掛かりになります。 ただし着氷は、雲粒径・衝突効率・結晶の大きさと姿勢・液水域の通過時間にも左右されるため、 着氷がないことだけから「液滴のない氷晶雲だった」と断定することはできません。
それでも、地上で観測される雪の «雲粒付き具合» は、 上空の雲の状態を推し量る手掛かりの一つになります。 雪結晶への雲粒付着は航空機着氷(気象庁の定義では 「水滴が地物に付いて凍結する現象」——航空機にも発現)と密接に関連します。 一方、送電線の着雪は「湿った雪が付着する現象」であり、 関連はありますが同一の過程ではありません。
| 量 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 付着雲粒の直径 | 約 10〜100 µm | Rango ほか(2003)が観察した付着雲粒の範囲 |
| 雪あられ(R4)の平均径 | 1〜3 mm | グローバル分類(Kikuchi ほか 2013) |
| 気象庁の「あられ」 | 直径 5 mm 未満 | 粒径による気象用語(形態分類とは別軸) |
| 気象庁の「ひょう」 | 直径 5 mm 以上 | 積乱雲から降る氷塊 |
| 過冷却雲粒の温度域 | 0 ℃未満〜約 −38 ℃ | 約−38 ℃は均質凍結の代表的目安(粒径・時間に依存) |
| 氷核による凍結 | −38 ℃より暖かい氷点下でも可能 | 氷核活性粒子による不均質凍結 |
初版:2026-08-05 以前(正確な作成日は記録なし——判明し次第記入)|最終更新:2026-08-12